【書評】スタンフォードの自分を変える教室

最近、本屋さんに山積みになっているのを良く見ますね。

原題は、The Willpower Instinctという直訳するとちょっとわかりづらいタイトルです。

スタンフォードの心理学者が著者なのですが、科学的なリサーチの結果を身近な問題に落としこんで話しているのでわかりやすいですし、ダイエットや禁煙などについても書いているので、そこらへんで耳が痛い人にはうってつけの本です。

自分のポテンシャルを発揮するには、「やる力」「やらない力」「望む力」が必要であり、これらの根源的なものは「意志力」です。しかし、この意志力とは一体何なのか?ということを、脳科学や心理学の立場から考察していきます。

読み進めていくと、意志力の保ち方や自己欺瞞にいたるまで10章にわたって話していくのですが、読んでいると人間とはいかに意志が弱く自分に適当な言い訳をしやすいものなのかというのがびっくりするぐらいわかってきます(笑。
しかし、だからこそ、その性質と正体を把握することが重要になってきますし、考えなしに扱うのではなく、うまく乗りこなすことでポテンシャルを引き出すことができるようになります。

詳しいくだりは、是非本を読んで欲しいのですが、読んでいてある意味しっくりきたと同時にびっくりしたのが、「意志力はリミットがある」ということです。

これは具体的に言うと、意志力とは筋肉のようなもので(本書で述べられています)、使うほど消耗し、休ませないと回復しない
よく言われるように、強い心と決意があれば、意志力もたくさん引き出せるといったようなものではないということです。つまり自分の意志力という「能力」を把握し、それを消耗し過ぎないように使い、また休ませて回復させるというのが非常に大切になってきます。そして筋肉と同じように、意志力と自制心も訓練によって鍛えられるということも研究の結果わかっています。

また自己批判がいかに人間の精神に悪影響を及ぼすかということにも触れられています。カウンセリングをしていると、日本人は本当に良くも悪くも責任感を強く感じる国民性があると思うのですが、その中でも特に自己批判的をよくする人たちがいます。つまり何かに失敗した時や達成できなかったことに対して、しょうがないさというふうに考えるのではなく、「自分はダメだ!」といったように自らを責めてしまうようなタイプの人は、自己批判や悲しみを感じつつもそういった感覚と向き合わないで、抑圧するようなことをしてしまうと、深刻な不安障害の症状を悪化させてしまうことが研究によって明らかになっています。
つまりそういった苦しみをストレス発散などで、安易に逃避したり押さえつけるのではなく、きちんと理解して折り合いをつけていくのが最善の道なのです。

他にも様々なテーマをもとに人の脆弱な意志の力と心理を暴いていく(笑)わけですが、人間の心理の癖や限界を知ることで、逆に気持ちが楽になったり悪癖を改善するのに役に立つのではないかと思います。

すごく新しい知見が書いてある本ではありませんが、現時点で心理学が提供してくれる情報をうまくまとめてありますし、日々の生活に落としこんで使えるようによく噛み砕いてあります。

本来は10週間の公開講座だったものなので、一章ずつ一週間ごとに自分の生活に落としこんで読んでいくという読み方でも良いと思います。

科学的な見地から人間の性質を知り、自己改善を試みたいという人にはぜひ読んで欲しい一冊です。